洞窟物語



2004年12月 開発室Pixelさんより公開 フリーソフト
オーソドックスな横画面アクションゲーム


このレビュー記事を書いた日:2005年1月8日



 前置きとして、このゲームを始めたきっかけを書いておく。

 正式版公開の1ヶ月前頃から、さまざまなサイトでこのゲームが取り上げられ始めた。動作確認版とも言うべきものが公開され始めたからだ。どこを見ても、『面白い』というコメントしか見あたらなかった。当然気になりはしたが、テストプレイヤーもかなりいるようなので、乗り遅れ気味だったワタシは正式版の公開を待ち、それからこのゲームを始めた。

 正直、プレイする前はあんまり意欲的ではなかった。ゲーム紹介のページがかなりあっさりしたものであったためだ。結構飽きやすく、プレイ途中で、果ては買うだけ買って放置気味になるということさえある、そういう自分の性格をそれなりに理解していたため、新しいゲーム、それも時間がかかりそうなものをやり始めること自体に抵抗を覚えていた。まぁ、のんびりまったり進めていけばいいかな〜なんて思っていた。

 …まさかこんなことになろうとはね。


プレイしやすいアクションゲーム
 アクションとして非常にとっつきやすいシステムであり、また操作性も抜群である。だからこそオーソドックスと言えるのかもしれないが。プレイ感覚としては、ロックマンやメトロイドなどのアクションゲームと比較されることが多いが、操作の自由度では圧倒的に洞窟物語が勝っていると思う。特にブースターの扱いに慣れると爽快感も激増する。

 所持する武装は数種類あり、ゲームを進めるにつれて増えていく…まぁ至極一般的に。ノーマルな武器をはじめ、弾数制限や軌道、威力など様々で、似通った武器を2つ持っているため片方は全く使わないなんてこともまず無い。戦況に応じて武装を変えていくことでどんな状況にも対応していける…といっても、初期のロックマンのように弱点武器を使うか否かで難易度が激変するというほど極端なものではない。もちろん場合によるけど。プレイヤー自身がこれだと思う武器を使えば、それでなんとかなります。
 武器ごとにエネルギーが設定されており、基本的に敵を倒して得られるアイテムでその武器を強化していくことになる。ダメージを喰らうことで劣化する仕組みだが、武器によっては強化しない方が良いというものも。ゲームを進めながら少しずつ強化するも良し、地道に強化した後に一気に突破するも良し。ここら辺も柔軟である。

 ライフゲージ制となっており、これもゲーム進行に伴って“ライフカプセル”を入手することで増加していく。敵を倒したときに回復アイテムが出ることもそれなりに多いので、ダメージを受けることを極度に恐れる必要はない。もちろん、敵の攻撃で受けるダメージは一様ではないので、大ダメージを受ける攻撃には細心の注意を払う必要がある。このような攻撃を普通に避けるだけでなく、他の低威力な攻撃を受けることにより発生する無敵時間を利用して回避することも可能である。ライフが無くなりゲームオーバーとなった場合は、前回セーブした地点から再開することになる。
 また、そこかしこに即死トラップが存在する…が、それもアクションゲームとして当然存在する程度のもの。マリオやロックマンに比べれば数も嫌らしさもない。トラップにやられたのならば、それを覚えて次のプレイに生かせばそれでいい。セーブ地点もそれほど離れているわけでもないので、やり直しも素早い。

 通常の敵やボスが仕掛けてくる攻撃は、そのほとんどが自機の攻撃により相殺可能なものである。そのため、無理に敵の攻撃を避けようとするよりも、とにかく連射して攻撃し続けた方が良いことが多い。まさしく『攻撃は最大の防御』というヤツである。それらを撃墜することでもアイテムが手に入るため、ボス戦といえど回復をしながら戦うことが出来る。といっても、回復しようとしてもダメージの方が大きいことがしょっちゅうなので、やはり攻撃することに重点を置いた方が良いだろう。

 ゲームシステムについてはこんなところか。あとはプレイヤーの腕次第であるが、ワタシはそれほど難しいとは思わない。アクションが苦手な人には難しいと感じられるのかもしれないが、この洞窟物語は、プレイを重ねるほど自分が上達していくのがよくわかるゲームだと思う。プレイヤーがそれなりの経験を積むことで越えられる壁はあってしかるべきである。


このグラフィックをどう受け取るか?
 上のタイトル画面を見てもわかると思うが、ファミコンの頃のようなグラフィックである。最近コンシューマーに跋扈している、グラフィックには力を注いでるのかもしれないが内容はどうなのよと問いたくなるゲームとはまさに対照的と言えると思う。ワタシは、グラフィックが緻密で綺麗であるかどうかということより、ゲーム内のさまざまなオブジェクトが判別しやすいということの方が、ゲームとしては重要であると考える。そのため、むしろこういうグラフィックの方が見やすく、良いと思うのだがどうか。

 ワタシと同世代の人間でも、最近の高度なグラフィックに悪い意味で毒されてしまい、こういうグラフィックを毛嫌いする友達なんかも少なくはない。もし、ただゲーム画面を見ただけで「こんなのやってられるか」などと考えるのなら、それはすぐにでも考えを改めてプレイしてみるべきである。こういったグラフィックにも充分な味があることがわかると思う。

 レビュー書いてる本人がグラフィックをそれほど気にしない人間なのでこの程度で。


展開が気になるストーリー、そして愛着の湧くキャラクターたち
 …誰かの通信が聞こえる。目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中。洞窟を抜けた先に広がる“ミミガー”と呼ばれる生物の村。敵対する者達も現れ、少しずつ物語が紐解かれていく。基本的には一本道のストーリー展開。そのストーリーに沿ってキャラクターがうまく動かされていく。プレイそのものも、次に行くところに迷うことなく進められる。ゲームを進めるほど展開を理解できる、これまたオーソドックスなもの。

 冒頭に出てくるカズマ、そしてカズマが呼ぶスー、ミミガーの村の住人であるキングやトロ子、敵対するミザリー、バルログ…冒頭部分だけで出てくる主要キャラ達。どいつもおもしろいキャラだ。こういったキャラはもちろん、そこら辺の雑魚敵にだって愛着が湧く。魔界村のゾンビに愛着を持つ人は少なさそうだが、マリオのクリボーやノコノコにはなんとなく愛着が湧きませんかね?そんな感じです。

 ストーリーはキャラクターの可愛らしさとは裏腹にシリアスな展開を辿り、そしてだんだん深刻なものへと変わっていく。容赦なく息絶え、消え去っていく主要キャラクターたち。絶望的な状況のために逃げ出すこともできる。それでも、物語を進めていけば必ず光明が見いだせる…か。それほど長いストーリーでもなく、ゲームプレイ時間含めて10時間もあれば終わると思われるものだが、決して薄っぺらなものではない。頭に焼き付く内容であると、そう感じる。


ゲームを盛り上げる絶妙な楽曲の数々
 洞窟物語では、開発室Pixelさんが開発されたソフト『オルガーニャ』を使っての作曲がされているとのこと。音はMIDIのようで、これまたファミコンのような感じで。でもグラフィックと音楽が両方ともこういう感じなので統一感ばっちりでいい感じです。
 と、これはまぁ言ってしまえば音についてですが、さて音楽はというと。もうね、全35曲+αあるわけですが、どれも素晴らしい曲ばかり!物語の場面場面に合わせて雰囲気ピッタリな曲が流れます。まさに非の打ち所がない。アクションそのものもいいものですが、それにもまして心地良い音楽のためにゲームをよりいっそう楽しくしてくれます。

 個人的に好きな曲をいくつか挙げると、タイトル画面、そして終盤大農園で流れる『洞窟物語』これが人気高いようですね。あと、外壁の曲『つきのうた』ここでバッドエンドに行くかどうか決められるのですが、この曲を聴いたらもうバッドエンドなどにはいけませんよ。まさに終盤、って雰囲気です。他にも、タマゴ回廊で流れる『わんぱくロボ』『灼熱の背中』、コアで流れる『地熱』『圧迫するチカラ』、それに『バルログのテーマ』『グラビティ』など、挙げてたらきりがありません。それほど、どの曲も良い曲ばかりだということです。
 その中でワタシが最も好きなのは、さまざまな場面で流れる『胎生』です。冒頭の盛り上がり方、そして中盤からの力強いメロディにつながり、ふっと弱まるところでループに入る…この曲がもうたまりません。

 作者さまのホームページにて、BGM試聴ソフトまで置いてくれています。なにかPC上でやるというときはこれをループでかけっぱなしにしておくと、下手すると音楽に気を取られすぎて何もできなくなってしまうので注意が必要です。


さまざまな隠し要素に基づく中毒性
 一本道のストーリー展開から、バッドエンド、グッドエンドに分岐している。ゲームのラストで分岐するわけではないので、まずはバッドエンドを見ておきたい。そしてグッドエンドへ…と、これは当然の話。洞窟物語には、それだけでは終わらない真のエンディングが隠されている。これは終盤でどうこうしようにもどうにもならない分岐点が存在し、特別なイベントを起こしていなければ見ることは敵わない。それは間違いなく、初めてのプレイで簡単に見つけられ、こなせるようなものではない。
 が、だからといって1回目のプレイから攻略サイト等を見ながらゲームを進めることはオススメしない、というよりもう絶対にやめてくださいと言わざるを得ない。1回のプレイにたいした時間もかからないので、まずは自分の力のみで、ストーリーを進めてもらいたい。アクション面でのサポートならまだかまわないが。
 ただそんなことを書いただけでは説得力に欠けることはわかりきっている。だが、このゲームを真に楽しむためには最低2回のプレイが必要不可欠であることは間違いない。プレイしなければわからないことだが、プレイヤー達は声をそろえてこのように言うだろう。

 また、それとは関係のない隠しイベントもいくつかあり、それに関連する隠しアイテムも存在する。自力で見つけるのは非常に困難なものばかりなので、そういうのが好きな人にはたまらないかもしれませんね。

 プレイ時間の短さのため、本編を何周もする、という中毒性も少なからず秘めているようだが、それ以上に高い中毒性を持つものが存在する。上で書いた真のエンディングでの隠しダンジョン、血塗られた聖域のタイムアタックである。このダンジョン、ラストダンジョンにふさわしく難易度は滅茶苦茶に高い。普通に攻略するだけでもかなりの時間を要すると思われる。まずはタイムなど気にせずとにかくクリアして、真のエンディングを見ることで感動をつかみ取っていただきたい。
 しかし、慣れとは恐ろしいものである。そんな高難易度ダンジョンでも、回数を重ねていくうちにどんどんタイムは縮まっていく。このダンジョンが一番、自分の腕が上達していくのが顕著に現れる場所であろう。

 これだけならただのやり込みで、「そんなのやらなくてもいいや」って人が出てくるでしょう。もちろん、報酬だってあるんですよ、隠し要素満載ですから。クリアタイムが5分台になると、タイトル画面がカーリーに変化します。それに伴い、音楽も変わるのです。といっても、この段階ではまだそれだけ、音楽も隠しダンジョンのものです。が、5分を切ると…再びキャラが変化、そして今度は音楽もここでしか聴けない曲となります。これは、4分、3分を切ったときにも同様に起こります。ここまで到達するのは(特に2分台)本当に徹底的にやり込まねばできません。しかし、回数を重ねるたびにどんどん縮まっていくタイムを見ると、「頑張ればいつかできるかも…」という気持ちが大きくなってくるのです。


こんなゲームは他には存在しない
 システム、グラフィック、ストーリー、音楽などの要素がこれほど完璧に絡み合っている、洞窟物語。これほどの超良作ソフトが、まさかのフリーソフト。これら全てを一人で構築したPixelさんは、「シェアウェアにしたらプレイヤーが減る」という、いたって単純な理由のために、洞窟物語をフリーソフトとした、とのこと。きわめて純粋に、遊んでもらいたいと願って制作された、それが洞窟物語。もう他のゲームなんかやってる場合ではありません。

 その他、このゲームについてワタシがあとから知ったことをいくつかまとめておきます。

 どうやら洞窟物語は、4〜5年の歳月をかけてようやく完成に至ったとのこと。それも、2〜3年の段階で完成間近を迎えたものの、吟味した結果、一度全てを捨てて作り直すという過程をも経ているとのこと。作者自身が満足できうるものを作るためには妥協を許さない、それは4〜5年の歳月を経て見事に現れたようです。

 また、Pixelさんのゲームを作るモチベーションの一つとして、『自分の作った音楽を聴いてもらいたい』というのがあるとのこと。洞窟物語の音楽を聴いてると、これもわかる気がします。だからこそ、ゲームと音楽がこれほどまでに見事にシンクロしているのでしょう。



ここまで読んでまだプレイしてないという人は今すぐダウンロードして遊びましょう。

開発室Pixel

前作『いかちゃん』も、左右キー+2ボタンという少ないボタンで独特の動きができ、
ほのぼのとしたグラフィック、音楽、ストーリー展開が非常に面白い。
プレイ時間は非常に短いですが、これほどまで惹きつけられるものがあるとは。
まさに“ひとくちアクションアドベンチャー”といえますね。




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