洞窟物語のウラガワのウラガワ・デバッガ隊編

【ご注意】この記事には、洞窟物語のネタバレが多数含まれています。クリアしていない方は、是非本編をクリアしてからお読みください。

2004年1月、それまでバラバラにデバッグを依頼されていたナオクさん、虎いさん、BA2氏、僕の4人が、デバッグ用BBSに集められた。これからここで、共同してデバッグ作業を行う事になる。この時渡された洞窟は、『タマゴ回廊?』まで完成していた。BBSの中で、虎いさんの圧倒的なバグチェック量と、ナオクさんの豊かな発想力に圧倒される僕。BA2氏はマスコット。

このBBS、当初は誤字脱字やフラグミス(ボス戦中に外へ出られる)、フリーズ等の報告がメインだったのだが、いつの間にかデバッグよりバランス調整などの話へ移って行き、最終的にはストーリーや追加ステージ要望、エンディングの演出などまで飛び出す事になる。その期間、およそ1年。

以下は要望の一例、武器レベルについてのディスカッション。

  • Lv3の武器が一発レベルダウンするのがストレス(当時はどの武器も一発レベルダウンだった)
  • 一発だけダメージを無効化する『簡易バリア』を敵が低確率で落とすのはどうか
  • MAX状態からLv2の1/2程度までゲージが下がったらレベルダウンするのはどうか
  • 新たなアイテムを増やすと、プレーヤーが覚える事が増えてしまう
  • Lv3になっても経験値を貯められるようにして、他のレベルと同様0になったらレベルダウンするよう仕様変更

大体こういう感じで、誰かが問題提起してディスカッション、後に天谷君が実装という流れだ。ありとあらゆる案が飛び出して、一時期『ドカーン!!おわり!!』という島崩壊放置エンド案が流行ったりも。以下、デバッガ隊とのやり取りで生まれたものを幾つか抜粋。

  • 『スーパーミサイル』…ソードが強過ぎてミサイルの出番が無くなる為
  • 『犬の名前』…最初は全て『ゴン太』だったが、ナオクさんが全て命名
  • 『様々な生存ルート』…博士もカーリーも、最初は助かるルートすら無かった
  • 『聖域のストーリー』…出来上がったステージを見て、ナオクさんが連想
  • 『シュプール』…ナオクさん「溜め撃ち欲しいですよね」 天谷君「考えたくない…」 2週間後の天谷君「出来ましたー」

読み返していると色々気が付くところがある。どうでもいい話なのだが、地獄を要望したのは、僕だった。

あと個人的には、昔話してた「凶悪ステージ」が欲しいなと。
ストーリーに全く絡まないオマケステージで、
かなりキツい面構成や敵配置になってるヤツを。
全国の少年少女を絶望の淵に叩き込むようなのを。

ごめんね、全国の少年少女の皆さん。でも、鬼畜ステージを作ったのは彼です。今でもtwitterやニコ動から悲鳴が聞こえてきて、罪悪感で夜も眠れないかというとそうでもありません。

また、要望を聞くだけでは無く、何故こうなのかという意図や理由を話してくれる事も頻繁にあった。読んで納得、モニタを前にして唸らされる。下は、入手したばかりのソードLv1が強過ぎるのではないかという意見に対しての天谷君のレス。

飛距離があって連射できない武器は
動く敵には使い難いものです。
もし外してしまったら的が目の前にいても
弾が消えるまで次を撃つ事が出来ません。

直前に手に入れるマシンガンで、
アクションゲームが「数撃てば当たる」状態になります。
それを「狙って確実」に移行させるために
LV1ソードがあります。
もし、LV1ソードのダメージが中途半端なら
連射機能を持たないプレイヤー(僕)は
この先もマシンガンで進みます。

それに対してソードLV2は接近し連発すれば
容易に自キャラの周囲を一掃でき
コレを活用することによって
プレイヤーのプレイが「接近戦」に変わります。

どの武器についてもですが、
手に入れたときの「これは強い!」と言う感動は重要です。
微妙なバランスをとるために無感動になるのは避けたい。

「洞窟物語が完成して評価されたのはデバッガ隊のお陰」と天谷君は言う。でも、僕らは意見を出すだけで、それらを選びながら一つにまとめ上げ、完成させたのは彼なのだ。この『まとめ上げる』という作業、生半可なものでは無い。気の遠くなるような積み重ねと執念の先で、このゲームは誕生した。

デバッグBBSは、洞窟物語の正式リリースと共に消滅した。ログを取っておらず後悔したのだが、実は天谷君がバックアップを残してくれていて、今回7年振りに当時のやり取りを見る事が出来た。天谷君もナオクさんも言っていた。このログは宝物だ。